データ深掘り

人口はあるのに、ごみがほとんど出ない町
——双葉町・大熊町のデータが語る歩み

公開日:2026年9月16日/出典:環境省 一般廃棄物処理事業実態調査(令和元〜6年度)

日本ごみ処理ダッシュボードで1人1日あたりごみ排出量のランキングを下位から見ていくと、福島県双葉町・大熊町が全国平均を大きく下回る数値で並んでいます。令和6年度の双葉町は91.9g、全国平均(551.6g)のわずか6分の1です。これは住民がごみを出さない生活をしているからではありません。東京電力福島第一原子力発電所事故にともなう避難指示の影響で、住民登録がある一方、実際にその町に居住している人は限られているという事情が背景にあります。

91.9g
双葉町 1人1日排出量(R6)
551.6g
全国平均(R6)
約22倍
双葉町の排出量増加(R1比、4.1g→91.9g)

「登録人口」と「実際の居住者」が一致しない特殊な事情

2011年の東日本大震災にともなう東京電力福島第一原発事故により、双葉町・大熊町を含む周辺自治体は避難指示の対象となりました。環境省データが用いる「人口」は住民基本台帳上の登録人口であり、避難指示区域の見直しや帰還困難区域の再編が進む中でも、多くの住民が登録上は町の住民でありながら、実際には町外で避難生活を続けているケースが多く残っています。

この結果、総排出量を住民登録人口で割って算出する「1人1日あたりごみ排出量」は、実際にその地域で生活している人の数に対しては過小な分母(多すぎる人口)で計算されることになり、数値が極端に低く出ます。

令和元〜6年度で見る、緩やかな回復の軌跡

双葉町・大熊町とも、避難指示の段階的な解除や特定復興再生拠点区域の整備にともなって、帰還・居住や事業活動が徐々に再開されています。この動きは、ごみ排出量の推移にも表れています。

双葉町・大熊町の1人1日ごみ排出量の推移(環境省データより)
年度 双葉町 大熊町
R14.1g72.8g
R228.7g109.7g
R340.4g116.8g
R448.3g151.2g
R555.9g171.3g
R691.9g161.7g

双葉町は令和元年度の4.1gからほぼ一貫して増加を続け、令和6年度には91.9gに達しています。町の一部で特定復興再生拠点区域の避難指示が解除され、居住や事業所の再開が進んだ時期と重なります。大熊町も同様に増加基調が続いていますが、令和6年度はやや減少しており、単純な右肩上がりではない点にも注意が必要です。

隣接する浪江町・富岡町は、双葉町・大熊町よりも早い段階で避難指示の解除が進んだ地域を含み、1人1日排出量もそれぞれ265.7g、312.0g(令和6年度)と、全国平均には及ばないものの、双葉町・大熊町よりは高い水準で推移しています。避難指示解除の進み方の違いが、そのまま統計上の数字の違いとして表れていると考えられます。

数字が示しているもの :これらの町のごみ排出量の低さは、住民の生活習慣の指標ではなく、震災・原発事故からの復興の進み具合を映す一つの側面です。排出量の緩やかな増加は、町での生活や事業活動が少しずつ戻りつつあることの表れと読むことができます。
除染にともなって発生する土壌や廃棄物は、本サイトが扱う一般廃棄物とは別の枠組み(除去土壌等)で管理されており、このデータには含まれていません。また、日中に復興工事などで町内に滞在する作業者は住民登録上の人口には含まれず、その活動にともなうごみの一部が事業系ごみとして計上されている可能性があります。数字の解釈には、こうしたデータの性質を踏まえたうえでご留意ください。

この事例から学べること

「1人1日あたりごみ排出量」のような指標は、多くの自治体では生活実態を映す便利な物差しになりますが、住民登録人口と実際の居住者数が大きく異なる特殊な事情を持つ地域では、そのまま比較することが適切でない場合があります。数字の裏にある地域の背景を理解した上で読み解くことが大切です。

本サイトのダッシュボードでは、こうした自治体についても他の地域と同じ形式でデータを確認できます。数字だけでなく、その背景にある事情も合わせて見ていただければと思います。

福島県内の自治体別データを、推移グラフで確認してみましょう。

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