データ深掘り

箱根町の1人1日ごみ排出量はなぜ全国トップクラスなのか?
観光地の「隠れ人口」問題

公開日:2026年9月16日/出典:環境省 一般廃棄物処理事業実態調査(令和6年度)

日本ごみ処理ダッシュボードで「1人1日あたりごみ排出量」のランキングを見ると、人口約1万人の神奈川県箱根町が全国上位に入ります。令和6年度の数値は1人あたり1日3,432g。全国平均(866g)の約4倍、神奈川県平均(753g)と比べても約4.6倍という突出した数字です。人口の少ない町がなぜこれほど多くのごみを出しているのでしょうか。

3,432g
箱根町の1人1日排出量(R6)
866g
全国平均(R6)
753g
神奈川県平均(R6)

事業系ごみが生活系ごみの3倍以上

箱根町の令和6年度のごみ内訳を見ると、住民の生活から出る「生活系ごみ」が3,308t、飲食店やホテル・旅館などから出る「事業系ごみ」が10,239t。事業系ごみは生活系ごみの約3.1倍に達しています。

これは全国的に見ても異例の比率です。令和6年度の全国の市区町村平均では、事業系ごみは生活系ごみの約0.39倍程度にとどまります。つまり箱根町は、標準的な自治体と比べて事業系ごみの割合が桁違いに大きいということです。

観光地の事業系/生活系ごみ比率(令和6年度、環境省データより)
自治体 人口 1人1日排出量 事業系/生活系 比率
箱根町(神奈川・温泉/観光地) 10,815人 3,432g 約3.10倍
草津町(群馬・温泉地) 6,041人 2,180g 約2.07倍
山中湖村(山梨・観光地) 5,816人 2,181g 約2.20倍
全国市区町村平均 866g 約0.39倍

草津町(群馬県の名湯)や山中湖村(富士五湖の観光地)も、箱根町ほどではないものの、事業系ごみの比率が全国平均を大きく上回り、1人1日排出量も全国上位に並びます。観光・温泉地に共通するパターンが見えてきます。

「1人1日排出量」の分母が抱える弱点

1人1日あたりのごみ排出量は、総排出量 ÷ 住民登録人口 ÷ 365日で計算されます。ここで使われる「人口」は住民票のある人、つまり定住人口です。しかし箱根町のようにホテル・旅館・飲食店が集積する観光地では、宿泊客や日帰り客が年間を通じて大量に訪れ、その滞在中に発生するごみの多くは「事業系ごみ」として計上されます。

つまり、ごみを実際に発生させている「昼間人口・交流人口」は住民登録人口よりもはるかに多いのに、統計上の分母は少ないままです。この結果、観光地の1人1日排出量は実態以上に大きく見えてしまう構造的な特徴があります。

言い換えると :箱根町の住民が全国平均の4倍もごみを出す生活をしているわけではなく、年間を通じて町を訪れる膨大な観光客の存在が、住民人口を分母とする統計に表れている可能性が高いということです。
ただし、本サイトが利用する環境省データには宿泊者数や観光客数そのものは含まれていません。上記は「事業系ごみが生活系ごみの何倍か」という比率と、他の観光地との比較パターンから導いた推測であり、断定するものではない点にご留意ください。

この事例から学べること

「1人1日あたりごみ排出量」は自治体間の生活スタイルを比べる便利な指標ですが、観光・商業が盛んな自治体では住民人口と実際にごみを発生させる人口が大きくずれることがあります。こうした自治体を評価する際は、総排出量だけでなく、生活系・事業系の内訳や産業構造も合わせて見ることが欠かせません。

本サイトのダッシュボードでは、区分(生活系・事業系・合計)を切り替えて地図やランキングを表示できます。気になる自治体があれば、内訳を比べてみてください。

箱根町や他の観光地のデータを、区分別に切り替えて詳しく見てみましょう。

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